星見る囚人

楽しい世界にむけ脱獄進行中

ブラック企業で精神崩壊した人間のスケッチ

 完全な愚痴記事です。

不快になる可能性もあります。暗い話です。

それでも自分の心のために書きました。

 

 

 

 

朝、目がさめると泣いている。

朝が来たこと、また仕事へ行く時間が来たことを自覚して、また涙が溢れる。こんな状態でも、暮らしていくためには働くしかない。泣きながら、緩慢な動きでベッドから出る。

顔を洗って歯磨きをして…鏡に顔が写る。ひどい顔だ。入社したばかりの頃はどんな顔をしていたのか、もう思い出せない。けど、きっと今よりはマシな顔だったんだろう。

着替えようと一枚服を着るごとに、体が重くなっていく。鎧でも着てるようだ。でも、この鎧はこの心を守ってはくれない。

用意はできた。とりあえず暖かいお茶だけ飲む。ちゃんとした朝食を食べたのは、いつだったろう。思い出せない。食べようとしたところで、どうせ吐いてしまうのだから、食べられないほうが都合が良い。部屋を出て、玄関へ向かった。

 

いつもこの玄関で時間をくってしまう。

体が硬直してしまうのだ。靴を履くまで、ドアノブを握るまで、ドアを開けて外へ出るまで、ドアの鍵を閉めるまで、歩き出すまで…

操り人形のように関節が軋むのを感じながら、無理矢理体を動かす。 思うように体が動かないとき、会社で言われたことが頭の中にこだまする。

 

「社会を知らんガキが」

「大人になれよ」

「精神が未熟やな」

「女々しいやつ…これやから女は」

「次はないからな」

「両親から愛されたことがないから、人格に欠陥があるんやろな」

 

最初はそういう言葉に反発心があった。お前に何がわかる、と。でも今は、彼らの言う通りなのかもしれないと思い始めている。

自分は欠陥人間なのだ。このくらいのことで、簡単に落ち込んで仕事が嫌になるなんて、きっと精神が弱くて社会人失格なのだろう。

せめてお客様に不誠実なことはしないように、仕事には行かなければ。自分が仕事が出来なくて迷惑を被るのは、他でもないお客様なのだから。

踏み出した足に、冷たいものを感じた。水たまりを踏んだらしい。よく見ると靴が破れている。でも、そんなこともうどうでもいいか…。構わず足を進めて、職場に向かう。

 

職場に着いて、会社本部から送られてきたFAXを読む。

「売上を上げろ!」「正社員としての自覚をもって」「数字にこだわれ」「毎日の業務が勝負と思って」「結果を出すこと!」「いらない社員になっていませんか」

文言自体は、会社として正義なのかもしれない。この会社が、正社員として働く1社目だからよくわからないが。でも、このFAXを読んで、胃が痙攣するのがわかった。トイレで少し吐いた。

 

 塾での仕事というのは、子どもたちが来るまでは比較的ひまなものだ。チラシを配りに行って授業準備が終われば、授業まで1時間くらい空く。

ゆったりしたペースのデスクワーク。何もつらいことはない。なのに、涙が出て止まらない。自分の精神の弱さが嫌になる。ハンカチで拭いながら、なんでもないふうを装ってはいるが上司にはばれているだろう。出社して挨拶して以来、こちらを避けている。

 

そうこうしているうちに、子どもたちが教室にやってきた。その音を聞いて、慌ててキャラを作る。

大丈夫、今このときから自分は「いつもの明るく楽しい先生」だ。必死に自己暗示をかけ、講師控え室を出て子どもたちのところへ向かう。

いつも通り笑って、いつも通り授業をして、いつも通り子どもたちとふざけて笑った。楽しい仕事だと思う。この子たちに迷惑なんて、絶対かけたくない。この子たちにがっかりされるなんて、絶対嫌だ。

この子たちのためなら、会社がつらかろうか体がヤバかろうが、耐えてみせる。そう思ってここまでやってきた。あと1、2ヶ月くらい耐えられる。

そう思っていると、子どもから声をかけられた。

 

「先生、無理したあかんで」

「え、大丈夫やで?どした急に」

「いや…だって先生、泣きそうやから」

 

もう、涙腺が決壊寸前だった。子どもはなんて目ざといのだろう。本当に子どもはよく見ている。

なんとか涙を堪えて、笑顔で大丈夫と言えた。君が心配してくれただけで、つらさに耐える甲斐があるよ。

 

最後の授業が終わり、教室を閉める。子どもたちが帰った瞬間から、また涙が溢れてきた。社長の言葉が、また頭をよぎる。

 

「精神的に未熟やから」

「人格に問題がある」

「女みたいなやつは反吐が出るな」

 

でも、もういい。仕事は終わったんだ。

 

相変わらず、上司は 見て見ぬ振りだ。でもきっと、何も言わないことが優しさなんだろう。大人の対応ってやつだ。

味方になることもないし、助けてくれることもない。それが当然なのだ。他人なのだから。このひとが悪いんじゃあない。

でも、それならはじめから一人きりで仕事をしていたほうがいい、と思ってしまう。助けを求められないなら、最初からいないほうが変に希望を感じずにいられる。誰かに助けてほしいと思っている脆弱な自分を感じて、また嫌になる。

他人は助けてはくれない。自分で何とかするしかない。それが現実だ。ヒーローは、どれだけ待っても泣いても現れない。

 

 先に職場を後にさせてもらう。時刻は23時。塾業界では、ふつうの時間(むしろ早いくらい)。

「仕事お疲れさま(`・∀・´)!」と彼氏からLINEが入っていた。彼が善意100%で、こちらを元気づけようとしてくれているのはわかる。有り難いとも思う。

けど今は、その明るさにどうしようもなくイラついた。能天気にさえ、見えてしまう。

あなたも、助けてくれることはない。それなら、全く気にかけてくれないほうが、いっそ楽でいい。得られない希望なんて、残酷だ。

そんな勝手な気持ちになって、結局返信できなかった。

 

ぼんやり月を見ながら歩く。夜はだいぶ気分が落ち着く。特にこのひとりの時間は。誰からも傷つけられることもないし、誰に気を遣うこともない。

不意にクラクションが聞こえた。

数10センチ先を車が通り過ぎていく。運転していた人が何かこちらに言っていたようだが、何と言ったのか聞き取れなかった。

 

ああ、いっそ轢いてくれたらよかったのに…。

 そんな思いが去来する。今の自分にとって、死は誘惑だ。この現実から逃れる唯一の手段に思えてくる。

 

本当なら、役所や病院に相談しに行くべきなんだろう。でもその時間も気力もない。というか、相談したところで自分がどうしたいのかもよくわからない。相談相手の時間を奪って終わり、になってしまう気がして申し訳ない。

 

とは言え、自分を殺す勇気もない。

手を伸ばせば届くような、ほんの1メートル先にあって、いつでもこちらを見つめてくる死という誘惑。

死にたくないと思ったこともあるのに、こんなにも死に惹かれるのは、過去の自分に対する裏切りだと思う。

 

嫌なら会社を辞めればいい、と思っていた。

でも、辞められない。自分のせいでお客様にも子どもたちにも、迷惑をかけてしまう。自分の代わりはいる、とわかっていても、辞められない。

辞められない、というのであれば、結局のところ耐えるしかないのだ。誰かに助けてほしいだとか、仕事を放り出したいだとか、そんなこと言っても仕方ない。

とは言え、もう仕事を辞めるのは決まっているんだ。どれだけ嫌な思いをしても、あと1、2ヶ月のこと。それまでは辞められない、と思うなら耐えるしかない。

 

家に帰って、食事もせずにたいして飲めもしない酒をむせるほど流し込む。最近明け方まで眠れないので、酒の力に頼ることにしている。

これまでの自分ならべろべろに酔っていたが、なぜか心臓がどくどく言うだけでちっとも酔わない。

着替えもそこそこに、ベッドに横になる。眠れたらいいのだけれど…。いっそ、目が覚めなくてもいい。無理矢理に目を閉じて、自分の心臓の音だけを聞く。

もう少し、もう少し耐えていれば、こんなつらいことは終わる…。

 

自分が壊れるのと、退職日とどちらが先になるだろう。

 

 

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(2018.2.4追記)

こーんなに病みまくってましたけど、なんとか立ち直れました。

どんなにしんどいときも、『自分の一番の味方は自分』だから。覚悟を決めて、また歩きだすことにしました。

 

 to be continued➸

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